M&A関連~中小企業とM&Aの実情~

はじめまして。公認会計士・税理士の山田勝也です。

メンバーコラムへの初投稿となります。初回は中小企業においてM&Aがどのように浸透しているのか、その実情を書いていきたいと思います。
中小企業の経営者とお話しする機会がよくあります。中小企業の経営者とM&Aの業務に携わっていることをお話しすると、「難しいことをしてますね~」「うちみたいな中小企業では、なかなか・・・」といったお言葉をいただくことがあります。
はたして、M&Aは、中小企業とは無縁のものであると考えていいのでしょうか。。。

Ⅰ.M&Aとは

M&Aとは、「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の略称でとなりますが、実務においては、会社法の定める組織再編行為全般や事業譲渡等も含む広い概念として使われることが一般的です。
M&Aの一般的なイメージとしては、組織再編に関するテクニックを駆使し、難しいことをしていることを想像する方も多くいるかと思います。
まず、中小企業のM&Aにおいて知っておくべきなのは、中小企業のM&Aにおいて使われる手法の多くは株式の譲渡か、株式の譲渡と別の方法を組み合わせた手法が大半であるという点です。
すなわち、中小企業のオーナーである株主が、その保有している株式を第三者に譲渡することによって行われます。そのため、M&Aは比較的シンプルなスキームによって行われるため、M&Aだからといって敬遠することはありません。

Ⅱ.中小企業にとってのなぜM&Aなのか~国としても中小企業の事業承継の手段としてM&Aに大きく舵を切っている!!

昨今、中小企業におけるM&Aは、増加傾向にあるとされています。そして、その背景には深刻な後継者不足による事業承継問題があるといわれています。
日本の経営者は高齢化の一途をたどっており、経営者の交代は喫緊の課題であるとされています。また、中小企業の休廃業・解散件数も増加傾向であり、2018年は46,000件と5年前と比較して1万件以上増加しています。これは、日本の競争力や地域における雇用、技術を失いかねない重大な課題となります。

このような状況を受け、中小企業庁は2019年12月20日に『第三者承継支援総合パッケージ』を公表し、2025年までに70歳以上となる後継者未定の中小企業約127万者のうち、黒字廃業の可能性のある約60万者の第三者承継(M&A)を促すことを目標と掲げ、今後政策がすすめられていくことになります。
これは、従前は、親族内の事業承継、従業員に対する事業承継を中心とした事業承継問題に対応する施策から、M&Aへ大きく舵を切られたことを意味していると思います。
今後中小企業においては、益々M&Aが身近なものとして事業承継の選択肢として表れてくるのではないでしょうか。

第三者承継支援総合パッケージ

Ⅲ.中小企業がM&Aを行うメリット

事業承継の手段として、M&Aを採用することは、以下のようなメリットがあります。

①創業者利潤実現の手段 / 相続税の納税資金対策として
非上場株式は、上場株式と異なり活発な市場を有していないため、市場で株式の売買を行うことができません。しかし、会社が剰余金を積み上げることにより、会社の価値は増加していくことになります。
これは、相続の発生時にしばしば問題となります。すなわち、非上場株式の価値が高まった状態で相続が発生した場合には、非上場株式価値が高くなり、それに応じた相続税を支払わなければなりません。しかし、非上場株式以外に目立った財産がない場合には、納税資金を捻出する必要があり、問題となります。

②税負担の減少
株式の譲渡を行った場合、売り主が個人である場合には所得税等は以下のように計算されます。

譲渡所得税=(総収入金額(株式譲渡価額) - 必要経費(取得費*1+委託手数料等)) × 20.315%*2
*1  実際の取得費に代えて、譲渡価額の5%とすることもできる
*2 復興特別所得税、住民税も含んだ実効税率

③売却=引退ではなく、長期の承継計画も可能
株式を譲渡した場合でも、即座に経営者としての引退を意味するわけではありません。特に中小企業においては、経営者が事業において重要な役割を占めていることが多く、株式譲渡後一定期間の間、引き続き経営に従事することがあります。そのため、株式の譲渡により会社の所有権を引き継いだのちに、中長期的な視点で新たな経営者(後継者)に対して経営権を引き継ぐことを可能とします。

④会社の成長戦略として
会社の経営を考えた場合に自社だけで経営していく選択肢は必ずしも最適の選択肢ではない可能性があります。
つまり、自社の成長性や、市場環境等を総合的に考えた結果、他社と統合することによって、費用の削減や、顧客の拡大、信用の増大等を果たすことができ会社の事業としては最適な選択肢であることがあります。
このような場合に他社との統合手段としてM&Aを行うことがあります。

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