M&A関連~「経営資源引継ぎ補助金」を活用したM&Aの検討~

こんにちは、公認会計士・税理士の国近です。

今回のテーマはM&Aに関連して、「経営資源引継ぎ補助金」についてです。

新型コロナ関連では持続化給付金など、注目度の高い補助金が出ていますが、
中でも「経営資源引継ぎ補助金」はM&Aにとっては重要な補助金になる可能性を秘めています。

※M&Aに関する過去記事も適宜ご参照ください
消費税②~会社分割・事業譲渡・合併等の組織再編行為に係る消費税~
M&A関連~M&A関連費用の会計処理と税務上の取り扱い~
M&A関連~組織再編行為に係る課税関係まとめ:株式譲渡・合併・会社分割・株式交換・株式移転・事業譲渡~

1.経営資源引継ぎ補助金とは

経営資源引継ぎ補助金については、経済産業省の資料によると、以下の通りとなります。
「第三者承継時に負担となる、士業専門家の活用に係る費用(仲介手数料・デューデリジェンス、企業概要書作成費用等)及び、経営資源の一部を引き継ぐ際の譲渡側の廃業費用を補助します」
つまり、一定の要件を満たす場合、DD費用・仲介手数料・企業概要書作成費用に補助金が支給されます。

経済産業省資料及び経営資源引継ぎ補助金(事務局)の公募要領によると、具体的には以下の金額が支援されることが予定されています。

補助対象 補助率 補助上限額
【買い手】
専門家への報酬
(仲介手数料等)
2/3 200万円
【売り手】
専門家への報酬
(仲介手数料等)
※廃業費用
200万円
(廃業費用650万円)

※経営資源引継ぎ補助金については、経済産業省のコロナ対策の以下の資料「第5章 経営環境の整備」内の「経営資源引継ぎ・事業再編支援事業」に詳細があります。
経済産業省-新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ

また、経営資源引継ぎ補助金のスケジュールについては現時点で確定していません。

2.経営資源引継ぎ補助金の補助対象

経営資源引継ぎ補助金の詳細は経営資源引継ぎ補助金(事務局)の公募要領の別紙、「『経営資源引継ぎ補助金』の補助要件等について」に記載されていますので、以下解説します。
※ただし、今後の検討状況によって変更があり得るとのこと

(1)買い手支援型

事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎを行う予定の中小企業・小規模事業者であり、以下の①~②のすべての要件を満たすこと
①事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎ後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること
②事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎ後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全般を牽引する事業を行うことが見込まれること

(2)売り手支援型

事業再編・事業統合等に伴う自社が有する経営資源の引継ぎが行われる予定(又は行われた※)の中小企業・小規模事業者であり、以下の要件を満たすこと。
①地域の雇用をはじめ、地域経済全般を牽引する事業を行っており、事業再編・事業統合等により、これらが第三者により継続することが見込まれる(又は継続された※)こと
※廃業費用を活用する場合に限って、事業再編・事業統合等に伴い自社が有する経営資源の引継ぎが行われた者も対象とする

上表はすべての要因を網羅した表とはなっていませんが、合併と株式譲渡どちらを採用すべきか検討している場合、ご参考にして頂き、必要に応じて、専門家にお問い合わせください。

(3)対象経費

補助対象経費については以下の通りとされています。
売り手支援型について、廃業費用を活用する場合は、補助上限額が200万円から650万円と増額されます。

①謝金
②旅費
③外注費
④委託費
(廃業費用)⑤廃業登記費
(廃業費用)⑥在庫処分費
(廃業費用)⑦解体費
(廃業費用)⑧原状回復費

(4)補助予定件数

約900件が予定されています。
買い手と売り手が申請するとすると、M&Aの件数ベースでは最低でも約450件が対象となると考えられます。足もとのM&A件数が約4,000件超であることを鑑みると、約1割以上の案件で活用可能と考えられるのではないでしょうか。
なお、公募要領によると、事務局の事務費を含めた補正予算額は36億円となります。事務費がいくらであるかは分かりませんが、廃業を含めた1件当たりの補助額は3~4百万円になるのではないでしょうか(ただ、前述した通り、廃業費用を活用しない場合、補助上限額は200万円となります)。
※事務局はデロイトトーマツフィナンシャルアドバイザリー合同会社が行っています

3.経営資源引継ぎ補助金の留意点

私見ですが、経営資源引継ぎ補助金は以下に留意する必要があります。

(1)要件を満たさないと補助がなされないこと

例えば、買い手支援型で補助を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。補助金申請時に以下に関する申請書を提出する必要があることが予想されます。また、統合後のPMIが大事になる可能性もあります。
また、申請の通過率がどの程度かは不明ですが、審査が厳しくなることも考えられるため、今後の動向に留意が必要です。
①事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎ後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること
②事業再編・事業統合等に伴う経営資源の引継ぎ後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全般を牽引する事業を行うことが見込まれること

(2)現時点でスケジュールが不明なこと

現時点でスケジュールは不明のため、今後の動向を注視することが必要です。

4.経営資源引継ぎ補助金のまとめ

・買い手・売り手それぞれにおいて最大200万円の補助金を受けることができる(売り手が廃業する場合は上限650万円となります)
・一定の要件を満たす必要があり、現時点では要件についても流動的
・現時点ではスケジュールが不明
・補助予定件数は約900件となっている

経営資源引継ぎ補助金については、弊社においても引き続き動向を注視していき、更新があったら周知していきたいと思います。

------------------------------

お問い合わせ

G&Sソリューションズグループは、企業経営を会計から支援する中央区京橋のコンサルティングファームです。
税務やIPO、M&A、事業再生等の多岐に渡るソリューションサービスを提供しておりますので、お気軽にご相談ください。

お問い合わせはこちら
M&Aの事業提携についてはこちら

また、弊社代表の書籍も併せてご確認頂けますと幸いです。
実例でわかる M&Aに強い税理士になるための教科書 (「強い税理士」シリーズ)

※本コラムは、掲載日時点の情報に基づく個人的な見解であり、G&Sソリューションズグループの公式見解ではないことをお断り申し上げます。
※本コラムに記載されている情報は、あくまで一般的な情報であり、特定の個人ないし法人を取り巻く環境に適合した情報ではありません。本コラムに記載されている情報のみを根拠とせず、専門家とご相談した結果を基にご判断頂けますようお願い申し上げます。