M&A関連~M&A保険、いわゆる表明保証保険とは①~

こんにちは、公認会計士・税理士の国近です。

今回のテーマはM&Aに関連して、M&A保険、いわゆる表明保証保険についてです。
海外で表明保証保険は先行していますが、近年、日本でも普及が始まっているところです。
M&Aの増加に伴い、表明保証保険の重要性も今後高まってくるのではないでしょうか。

【過去のM&Aに関する記事】
M&A関連~役員退職金①役員退職金の損金算入限度額①功績倍率法~
M&A関連~役員退職金②分割支給するとどうなる?分割支給と退職年金~
M&A関連~役員退職金③最終報酬月額が低額・無報酬のケース。1年当たり平均額法~
M&A関連~役員退職金④分掌変更が行われた場合の損金算入可否~
M&A関連~役員退職金⑤退職給与の打切支給~

今回はそもそも表明保証とは何か、表明保証保険とは何か、という点について概要を簡単に書きたいと思います。

1.表明保証とは

表明保証について、定義は見つけられませんでしたが、一般的に、「株式譲渡契約の買手または売手が、ある時点において、当該契約に関する一定事項について、真実かつ正確であることを表明し、保証すること」を指しています。

また、株式譲渡契約書の中では、表明保証する事項を規定する「表明保証条項」があります。
「表明保証条項」では、以下について、表明保証することが多いようです。
【売手の表明保証】①対象会社が適切に設立されていること、②株式を問題なく保有していること、③簿外債務が無いこと・・・等
【買手の表明保証】①買手自身が適切に設立されていること、②株式譲渡契約の履行権限があること・・・等

2.表明保証保険とは

表明保証違反がなされると、買手または売手が、相手方に損害請求することになりますが、当該表明保証違反により生じる損害を補償する保険を表明保証保険といいます。

表明保証保険は、買手または売手が加入することになりますが、買手が加入することが一般的です。表明保証保険は海外では、一般的となっていますが、近年、日本でもM&A件数の増加に伴い、普及が広がっています。

具体例が無いとイメージがつかないかと思いますので、
一例ですが、以下、表明保証保険の具体例を記載します。

(1)保険対象となる表明保証(保険契約者:買手)

何を保険の対象とするかは各社の保険の設計によりますが、保険対象の例は以下の通りです。
※ただし、デューデリジェンスが実施されていない場合/デューデリジェンスが十分でないと判断された場合等、一定の場合は付保対象外/免責事項になる可能性がある点留意する必要があります

①財務諸表
②公租公課
③人事労務
④対象会社の株式等
⑤重要な契約
⑥訴訟・紛争

(2)保険事故となるケース(保険契約者:買手)

保険金を支払うケースは、例えば以下のものが挙げられます。

①表明保証違反が判明した場合
②第三者請求の提起がなされた場合

(3)保険金の対象とする損害の範囲(保険契約者:買手)

保険金の対象とする損害の範囲は、例えば以下のものが挙げられます。

①表明保証違反による損害
②争訟費用
③求償権保全費用

3.表明保証保険のメリット

【買手】①表明保証違反の補償を確実に受けられることがあります。その他、②他社よりも魅力的な条件の提示が可能になる、③M&A後に、売手との関係悪化を避けることが可能になる、等のメリットがあります。

【売手・買手双方】補償リスクが保険会社に移転するため、①表明保証に対する抵抗感が無くなることや、②補償リスクをヘッジできることになります。

4.留意点

主な留意点として以下の2点が挙げられます

①モラルハザード:すなわち、表明保証保険を利用することにより、買手がデューデリジェンス(DD)を真剣に行わなくなる可能性
引受審査の結果、付保対象外/免責事項となり想定していた補償リスクのヘッジができない可能性(詳細は後日、執筆予定)

5.まとめ

株式譲渡契約書(SPA)の締結において、表明保証条項の調整はタフな交渉になることは少なくありません。

その際に、M&A保険(表明保証保険)の活用を検討してみては如何でしょうか。

また、弊社は引受審査の実施(アンダーライターとして審査)、M&Aに関する諸論点に関するご相談にも乗っていますので、お気軽にお問い合わせよりご相談ください。

【参考文献】
M&A保険入門: 表明保証保険の基礎知識 山本 啓太 (著), 関口 尊成 (著)
M&A入門 2022年版 (日経ムック) 日本経済新聞出版

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※本コラムは、掲載日時点の情報に基づく個人的な見解であり、G&Sソリューションズグループの公式見解ではないことをお断り申し上げます。
※本コラムに記載されている情報は、あくまで一般的な情報であり、特定の個人ないし法人を取り巻く環境に適合した情報ではありません。本コラムに記載されている情報のみを根拠とせず、専門家とご相談した結果を基にご判断頂けますようお願い申し上げます。

M&A関連~役員退職金⑤退職給与の打切支給~

こんにちは、公認会計士・税理士の国近です。

今回のテーマもM&Aに関連して、退職金についてです。
M&Aにおいては、オーナー株主である代表取締役の退任の他、使用人(=従業員)であった者が役員に就任するというケースもあります。
使用人が役員となった場合、退職金の損金算入の扱いはどのようになるでしょうか。
M&A関連~役員退職金①役員退職金の損金算入限度額①功績倍率法~
M&A関連~役員退職金②分割支給するとどうなる?分割支給と退職年金~
M&A関連~役員退職金③最終報酬月額が低額・無報酬のケース。1年当たり平均額法~
M&A関連~役員退職金④分掌変更が行われた場合の損金算入可否~

今回は、いわゆる「退職給与の打切支給」についてです。

1.使用人が役員になった場合の退職給与(退職給与の打切支給)

使用人が役員になった場合、退職給与規程に基づき使用人であった期間に係る退職給与については、損金算入が認められています。ただし、未払計上が認められていない点には留意する必要があります。

具体的には、法人税法基本通達9-2-36で定められており、以下の通りとなります。

【法人税法基本通達9-2-36(抜粋。ただし注書につき9-2-35参照)】
9-2-36 使用人がその法人の役員となった場合において、当該法人がその定める退職給与規程に基づき当該役員に対してその役員となった時に使用人であった期間に係る退職給与として計算される金額を支給したときは、その支給した金額は、退職給与としてその支給をした日の属する事業年度の損金の額に算入する。

(注) この場合の打切支給には、法人が退職給与を打切支給したこととしてこれを未払金等に計上した場合は含まれない。

なお、法人税法基本通達9-2-36及び法人税法基本通達9-2-35の注書きによると、未払金計上した場合は認めておらず、現実に金銭の支給が行われることが要件とされています。
※法人税法基本通達9-2-36では、退職の事実が無いものについて、例外的に認めているものであるため

2.退職給与の打切支給が認められず、損金不算入となる場合

また、以下の場合は、法人税法基本通達9-2-36の取り扱いが認められず、役員賞与として損金不算入になるものと考えられます。

(1)役員に就任した後、相当期間経過後に支給される場合
使用人としての地位がなくなったことにより、役員に就任したときに使用人としての退職給与を支給する場合に認めるものであるためです。

(2)退職給与規程から、使用人であった期間に係る退職給与として計算される金額として相当でない場合
あくまで、使用人であった期間に係る退職給与として計算される金額として相当である必要があります。
※この場合、法人税基本通達9-2-27の規定「使用人が役員となった直後に支給される賞与等」に該当しなければ、役員賞与として損金不算入となります

(3)現実に金銭の支給が行われず未払金計上した場合
前述した通り、法人税法基本通達9-2-36及び法人税法基本通達9-2-35の注書きによると、未払金計上した場合は認めておらず、現実に金銭の支給が行われることが要件とされています。

【法人税法基本通達9-2-27】
9-2-27 使用人であった者が役員となった場合又は使用人兼務役員であった者が令第71条第1項各号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる役員となった場合において、その直後にその者に対して支給した賞与の額のうちその使用人又は使用人兼務役員であった期間に係る賞与の額として相当であると認められる部分の金額は、使用人又は使用人兼務役員に対して支給した賞与の額として認める。

3.まとめ

退職給与の打切支給は一定の要件を満たせば、損金算入が可能となっています。
ただし、未払金計上は認められていない点に留意する必要があります。

弊社はM&Aに関する諸論点に関するご相談にも乗っていますので、お気軽にお問い合わせよりご相談ください。

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※本コラムは、掲載日時点の情報に基づく個人的な見解であり、G&Sソリューションズグループの公式見解ではないことをお断り申し上げます。
※本コラムに記載されている情報は、あくまで一般的な情報であり、特定の個人ないし法人を取り巻く環境に適合した情報ではありません。本コラムに記載されている情報のみを根拠とせず、専門家とご相談した結果を基にご判断頂けますようお願い申し上げます。

M&A関連~役員退職金④分掌変更が行われた場合の損金算入可否~

こんにちは、公認会計士・税理士の国近です。

今回のテーマはM&Aに関連して、役員退職金についてです。
M&Aにおいては、オーナー株主である代表取締役の退任の他、引継ぎ等のため分掌変更が行われることがあります。
分掌変更等が行われた場合、役員退職金の損金算入は可能でしょうか。
M&A関連~役員退職金①役員退職金の損金算入限度額①功績倍率法~
M&A関連~役員退職金②分割支給するとどうなる?分割支給と退職年金~
M&A関連~役員退職金③最終報酬月額が低額・無報酬のケース。1年当たり平均額法~

今回は分掌変更等が行われ場合の役員退職金の取り扱いについて書きたいと思います。

1.役員の分掌変更等の場合の退職給与

役員退職金は退職の事実に基づいて損金算入が認められますが、分掌変更等が行われた場合においても、損金算入が認められています。

法人税法基本通達9-2-32によると、分掌変更等により実質的に退職したと同等の事実にあると認められるケースとして、以下のケースが例示列挙されています。
ただし、いずれのケースも実態判断を伴っており、形式用件のみ満たすケースは損金算入が認められない点に留意する必要があります。
なお、(2)取締役が監査役になるケースは、同族会社の特定株主等についても適用除外となる点に留意する必要があります。

(1)常勤役員が非常勤役員になったこと
※常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く

(2)取締役が監査役になったこと
※監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第5号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる要件の全てを満たしている者を除く

(3)分掌変更等の後におけるその役員の給与が激減(概ね50%以上の減少)したこと
※その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く

【法人税法基本通達9-2-32(抜粋)】
9-2-32 法人が役員の分掌変更又は改選による再任等に際しその役員に対し退職給与として支給した給与については、その支給が、例えば次に掲げるような事実があったことによるものであるなど、その分掌変更等によりその役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められることによるものである場合には、これを退職給与として取り扱うことができる。(昭54年直法2-31「四」、平19年課法2-3「二十二」、平23年課法2-17「十八」により改正)

(1) 常勤役員が非常勤役員(常時勤務していないものであっても代表権を有する者及び代表権は有しないが実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)になったこと。

(2) 取締役が監査役(監査役でありながら実質的にその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者及びその法人の株主等で令第71条第1項第5号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる要件の全てを満たしている者を除く。)になったこと。

(3) 分掌変更等の後におけるその役員(その分掌変更等の後においてもその法人の経営上主要な地位を占めていると認められる者を除く。)の給与が激減(おおむね50%以上の減少)したこと。

(注) 本文の「退職給与として支給した給与」には、原則として、法人が未払金等に計上した場合の当該未払金等の額は含まれない。

2.分掌変更等の役員退職金を未払計上した場合は損金算入が認められるか

法人税法基本通達9-2-32では、分掌変更等の場合、原則として未払計上したものの損金算入を認めていません。

ただし、「原則として」とありますので、やむを得ないケースなど一定の場合は容認されるものと考えられます。

3.まとめ

分掌変更等の役員退職金は一定の要件を満たせば、損金算入が可能となっています。
ただし、形式用件のみ整えた場合は否認される可能性もある点に留意する必要があります。

弊社はM&Aに関する諸論点に関するご相談にも乗っていますので、お気軽にお問い合わせよりご相談ください。

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