こんにちは、公認会計士・税理士の国近です。
今回のテーマはM&Aに関連して、役員退職金についてです。
M&Aにおいては、オーナー株主である代表取締役が退任することはよくみられます。
その際に、資金繰り上の問題等により役員退職金を分割支給できるかどうかが問題となることがあります。
今回は役員退職金の分割支給について書きたいと思います。
1.役員退職金の分割支給の可否と損金算入時期
結論から申し上げますと、分割支給につき合理性があれば、役員退職金の分割支給の損金算入は可能です。
ただし、分割期間が長期にわたる場合は損金算入が認められなくなる可能性が高くなる点に留意する必要があります。
資金繰りの都合等の合理的な事情により、退職金を複数回にわたって分割支給する場合の損金算入の時期は、以下の2つが考えられます。
①株主総会決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度
②支払った日の属する事業年度 ※支給の都度損金経理
②の方法を採用する場合、分割支給とすることに特段の理由が無く、利益調整目的などの意図があり税金額に影響を及ぼす場合は、損金算入が認められなくなる可能性がある点に留意する必要があります。
また、分割支給が長期にわたる場合、後述する退職年金と見做される可能性がある点に留意する必要があります。
具体的な基準があるわけではなく分割支給の合理性とも関係するため、諸説ありますが、3年を超えると問題であるとか、5年を超えると問題であると考える向きがあるようです。
後述する退職年金と見做されると、法人の損金算入に影響を及ぼす可能性がある他、受け取った個人(オーナー)にとっては、退職所得ではなく雑所得として扱われて税務上不利となる可能性があります。
2.退職年金の分割支給の可否と損金算入時期
退職年金とは、退職金を分割して年金として受け取る方式です。
退職年金の損金算入時期は、国税庁の法人税法基本通達9-2-29にて以下の通り定めがあり、原則的取扱いと異なります。
具体的には、退職年金は年金を支給すべき時の損金の額に算入するため、年金の総額を未払金計上しても全額を損金算入することは認められません。
国税庁-退職年金の損金算入時期
法人税法基本通達9-2-29
法人が退職した役員又は使用人に対して支給する退職年金は、当該年金を支給すべき時の損金の額に算入すべきものであるから、当該退職した役員又は使用人に係る年金の総額を計算して未払金等に計上した場合においても、当該未払金等に相当する金額を損金の額に算入することはできないことに留意する。(昭55年直法2-8「三十二」、平19年課法2-3「二十二」、平26年課法2-6「三」により改正)
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