消費税④~課税の対象となる4要件~

こんにちは、公認会計士・税理士の国近です。

消費税の最初の記事では「消費税の仕組みの概要」として、どのような税金なのかについて記載しましたが、今回はどのような取引が課税の対象になるのかについて書きたいと思います。

消費税①~消費税のしくみの概要~

1.課税の対象

前回の記事では、消費税の課税の対象について以下のように記載しました。
今回は、取引が消費税の課税対象かどうかを判定するための4要件(課税の4要件)について、①から④で具体的に書きたいと思います。

これらの要件のすべてに該当した場合には、原則として消費税の「課税対象」の取引となり、これらの1つでも該当しないような取引は「不課税取引」となり、消費税の課税対象となりません。
※別のコラムで執筆予定ですが、「課税対象」となった場合も、「非課税取引」、「免税取引」となる可能性がありますので、別途検討が必要となります。

消費税の課税対象か悩んだ際には、この4要件に照らして考えてみるといいかもしれません。

※国税庁でも概要が記載されているためご参考ください。
本コラムにおいても、消費税法・消費税法施行令の他、国税庁HPの内容を参照しつつ記載します。
No.6105 課税の対象

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消費税の課税の対象は「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付け及び役務の提供」という要件をすべて満たしたものとなります。これを満たさないものは「不課税取引」といい、消費税の計算の対象とはなりません。

「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付け及び役務の提供」という要件については、以下の4要件に区別することができますが、詳細は次回以降の記事に譲りたいと思います。

①:国内において
②:事業者が事業として
③:対価を得て行う
④:資産の譲渡、貸付け、及び役務の提供

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2.課税の4要件~①国内において行うものであること~

課税の4要件のうち1つに、①国内において行うものであること(いわゆる内外判定)というものがあります。

すなわち、資産の譲渡または貸付については資産の所在場所、役務の提供については役務の提供が行われた場所が国内であれば国内取引とし、国内取引に該当しないものを国外取引と区分しています。

ただし、国境を越えた役務の提供に係る消費税については、例外的に内外判定基準が「役務の提供を受けるものの所在地」にて判定されることになるなど、例外規定があります(消費税法基本通達5-7-15の2)。
※詳細は別コラムで記載しますが、Google広告(GoogleAdwards)・Facebook広告やAmazonの一部サービスなどが対象となります。
No.6118 国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税関係について

また、資産の所在場所又は役務の提供場所が明らかでないものについては、それぞれの資産又は内容に応じて、登録した機関の所在地・住所地・事務所等の所在地など、政令で定める場所により判定することとされています(※消費税法4条3項、消費税法施行令6条)。

資産の所在場所又は役務の提供場所が明らかでないものの例として、船舶・航空機・工業所有権の譲渡・運輸・通信等が該当しますが、長いため一部抜粋としますが、詳細は以下の条文の通りとなります。

【消費税法施行令6条】
第六条 法第四条第三項第一号に規定する政令で定める資産は、次の各号に掲げる資産とし、同項第一号に規定する政令で定める場所は、当該資産の区分に応じ当該資産の譲渡又は貸付けが行われる時における当該各号に定める場所とする。
一 船舶(登録(外国の登録を含む。以下この号において同じ。)を受けたものに限る。) 船舶の登録をした機関の所在地(同一の船舶について二以上の国において登録をしている場合には、いずれかの機関の所在地)(居住者が行う日本船舶(国内において登録を受けた船舶をいう。以下この号において同じ。)以外の船舶の貸付け及び非居住者が行う日本船舶の譲渡又は貸付けにあつては、当該譲渡又は貸付けを行う者の住所又は本店若しくは主たる事務所の所在地(以下この項において「住所地」という。))
二 前号に掲げる船舶以外の船舶 その譲渡又は貸付けを行う者の当該譲渡又は貸付けに係る事務所、事業所その他これらに準ずるもの(以下この条において「事務所等」という。)の所在地
三 航空機 航空機の登録をした機関の所在地(登録を受けていない航空機にあつては、当該譲渡又は貸付けを行う者の譲渡又は貸付けに係る事務所等の所在地)
(後略)

3.課税の4要件~②事業者が事業として行うものであること~

「事業者」とは、個人事業者と法人をいいますので、個人事業者も対象となります。

また、「事業として」とは、対価を得て行われる資産の譲渡等を繰り返し、反復継続、かつ、独立して行うことをいいます。
従って、個人事業者がプライベートで行う取引については事業として行う取引とはなりません。また、例えば、個人の不動産業者が行う中古車の売買は事業として行う売買になりますが、給与所得者がたまたま自分の自家用車を手放す行為などは事業として行う売買とはなりません。

なお、法人は事業を行う目的をもって設立されたものですから、その活動はすべて事業となります。

4.課税の4要件~③対価を得て行うものであること~

「対価を得て行う」とは、物品の販売などをして反対給付を受けることをいいます。すなわち反対給付として対価を受け取る取引をいいます。
従って、寄附金や補助金などは、一般的には対価性がありませんので、課税の対象とはなりません。
また、無償の取引や宝くじの賞金なども原則として課税の対象になりません。

5.課税の4要件~④資産の譲渡、資産の貸付け若しくは役務の提供又は特定仕入れに該当すること~

消費税法上、「資産の譲渡等」とは、事業として有償で行われる商品や製品などの販売、資産の貸付け及びサービスの提供をいいます。(消費税法2条1項8号、2条2項)。

(1)資産の譲渡

資産とは、取引の対象となり得る資産の一切をいい、商品等の棚卸資産、固定資産のような有形のものの他、権利その他の無形の資産もこれに含まれます(消費税法基本通達5-1-3)。

また、資産の譲渡とは、資産の同一性を保持しつつ、資産を他人に移転させることをいいますが、資産の交換は資産の譲渡に該当することに留意する必要があります(消費税法基本通達5-2-1)。

資産の譲渡は通常の取引による売買が典型例ですが、例えば強制換価手続による資産の引き渡しなど、売買以外の形式でも資産の譲渡に該当するものがあります。

(2)資産の貸付け

資産の貸付けは、資産を他人に貸し渡すことをいいますが、資産の貸付けには資産に係る権利の設定や他の者に資産を使用させる一切の行為が含まれます(消費税法2条2項)

「資産に係る権利の設定」とは、例えば、土地に係る地上権若しくは地役権、特許権等の権利を設定することをいいます(消費税法基本通達5-4-1)。

また、「資産を使用させる一切の行為」とは、例えば、次のものをいいます(消費税法基本通達5-4-2)。

(1) 工業所有権等(特許権等の工業所有権並びにこれらの権利に係る出願権及び実施権をいう。)の使用、提供又は伝授
(2) 著作物の複製、上演、放送、展示、上映、翻訳、編曲、脚色、映画化その他著作物を利用させる行為
(3) 工業所有権等の目的になっていないが、生産その他業務に関し繰り返し使用し得るまでに形成された創作(特別の原料、処方、機械、器具、工程によるなど独自の考案又は方法についての方式、これに準ずる秘訣、秘伝その他特別に技術的価値を有する知識及び意匠等をいう。)の使用、提供又は伝授

(3)役務の提供

役務の提供とは、土木工事、修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介、興行、宿泊、飲食、技術援助、情報の提供、便益、出演、著述その他のサービスを提供することをいい、弁護士、公認会計士、税理士、作家、スポーツ選手、映画監督、棋士等によるその専門的知識、技能等に基づく役務の提供もこれに含まれます(消費税基本通達5-5-1)。

6.まとめ

以上、本コラムでは課税の4要件でしたが、如何でしょうか。
要件によっては細かい論点があり、慣れるまでは中々難しいとは思います。

また実務上は、判断に迷うものもでてきますので、その場合は課税の4要件から整理して検討することが必要になるものと思われます。

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