M&A関連~財務DDにおいて電話加入権はどのように評価すればいいの?~

はじめまして。公認会計士・税理士の国近です。

M&Aに関して、前回はM&Aの実情として以下の記事を書きました。
M&A関連~中小企業とM&Aの実情~

中小企業では過去に取得した電話加入権がBSに計上されていることが稀にあります。
税務上、電話加入権は評価損を計上することが認められておらず、取得価額のまま計上されている場合がほとんどです。

では、M&Aの財務DDにおいて電話加入権はどのように評価すれば良いでしょうか。

ということで、まずは、電話加入権とは何なのか・法人税法上(税務上)の評価はどうなっているかについて触れつつ、電話加入権について簡単にコラムを書きたいと思います。

Ⅰ.電話加入権とは

電話加入権は、NTT東日本のHPによると以下の通り定義されています。

「電話加入権とは『加入電話契約者が加入電話契約に基づいて加入電話の提供を受ける権利』です。」

また、NTT東日本が財産的価値を保証していないものの、社会実態として、電話加入権の取引市場が形成されていると認めたうえで、施設設置負担金についても定義されています。施設設置負担金については以下の通りです。

「施設設置負担金とは、『加入電話等のサービス提供に必要な弊社の市内交換局ビルからお客さまの宅内までの加入者回線の建設費用の一部を、基本料の前払い的な位置付けで負担していただくもの』です。」
NTT東日本HPより抜粋

過去には、固定電話で電話番号を取得する際に、施設設置負担金を支払うことが必要でした(=その結果、電話加入権を計上していた)。
ただ、現在では、電話番号の取得に施設設置負担金を支払う必要のないプランがあり、施設設置負担金の支払いは必須ではありません。

このように、電話加入権の意義は薄れていっているといえます。

Ⅱ.電話加入権の法人税法上の取り扱い

では、電話加入権は法人税法上どのように取り扱われているでしょうか。
電話加入権は無形の権利ですので、無形固定資産として取り扱われます。
さらに、減価償却は認められておらず、非償却の無形固定資産となります。

また、電話加入権の意義は薄れており、中古取引市場等で安く取引されていますが、評価損は計上できるのでしょうか。

実は、電話加入権について法人税法上、個別の定めはなく原則的に評価損は計上できません。
さらに、電話加入権を損金計上するためには、解約または売却等する必要があります。

そのため、中小企業のBSでは、電話加入権が取得価額で残され続けているケースが多いのです。

Ⅲ.電話加入権の財務DD(M&A時の財務調査)での評価

次に、M&Aにおける財務DDで、電話加入権はどのように評価すればよいでしょうか。

財務DDでBSを調査する場合、一定時点における実態の純資産額の把握を行うために行われます(もちろん、PL分析や運転資本等の調査を行う場合も多いので、実態純資産額の把握だけに留まらないことは多々あります)。
その際のBSの資産評価は、時価により行われるため、電話加入権も時価によって評価することとなります。

電話加入権には中古市場はあり、中古市場での時価で評価すべきとも考えられますが、実際上、電話加入権には利用価値はほとんど無いため電話加入権の時価はゼロとして評価されることが多いのではないでしょうか。
※個人の意見です。念のため。また、基本的に解約or売却しない限り損金算入できません。。。。

歴史のある会社のBSを見ると電話加入権が計上されていることが多いですが、財務DD上は、ほぼ無価値として評価されてしまうことが多いように見受けられます。

Ⅳ.まとめ

電話加入権については以下の通りまとめられます。
・非償却の無形固定資産
・損金計上するためには、原則的に解約or売却する必要がある
・中小企業のBSにおいて、取得価額で計上され続けていることが多い
・電話加入権には中古市場はあり、中古市場での時価で評価すべきとも考えられる
・財務DDでは、ゼロ評価されることが多いのではないか

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