M&A関連~組織再編行為に係る課税関係まとめ:株式譲渡・合併・会社分割・株式交換・株式移転・事業譲渡~

こんにちは、公認会計士・税理士の国近です。

今回のテーマはM&Aに関連して、組織再編行為に係る課税関係についてです。
以前、消費税に関連して、会社分割・事業譲渡・合併等の組織再編行為に係る消費税の取り扱いに書きましたが、今回は法人税の取り扱いについても触れたいと思います。
消費税②~会社分割・事業譲渡・合併等の組織再編行為に係る消費税~

株式譲渡・事業譲渡は組織再編行為ではありませんが、M&Aでは一般的な取引形態ですので、株式譲渡を含めて各組織再編行為における法人税・消費税などの課税関係について記載したいと思います。

1.株式譲渡に係る課税関係

株式譲渡は、会社組織に変更をもたらさない取引法上の行為です。
というとお堅い言い方となりますが、株式譲渡は組織再編行為ではなく、単純な株式の売買取引と捉えて問題ありません。

株式譲渡は単純な売買取引ですので、課税関係も他の資産の売買取引と同様に考えれば良いことになります。

そのため、課税関係は以下の通り、売り手に対して株式譲渡益課税がなされるのみとなります。
なお、株式譲渡は消費税は非課税となり課されません。ただし、非課税売上の5%を課税売上割合の分母に算入しなければならないため、課税売上割合が下がる点、留意が必要です。

当事者 税務上の取り扱い
買い手 課税関係なし
売り手 株式譲渡益課税
個人:20.315%
法人:実効税率(中小法人約36%)

2.合併に係る課税関係

合併とは、2以上の会社が契約により1つの会社になることをいいます。
合併については、新設合併・吸収合併があります。以下、吸収合併を前提として記載します。

合併は権利義務の包括承継であり組織法上の行為とされます。
つまり、株式譲渡のような単純な資産の譲渡とは性質が異なるため、課税関係についても別途規定されており、複雑な取り扱いとなっています。

適格合併と非適格合併で課税関係が異なり、適格合併では課税の繰り延べが認められている一方、非適格合併では時価で引き継ぐことが要求される他、被合併法人の株主についてもみなし配当課税がなされる可能性があります。

非適格合併となり、時価課税されても、必ずしも多額の課税が発生するとは限りません。しかしながら、被合併法人が含み益のある資産を持っている場合など多額の課税が発生する可能性があるため、留意が必要です。
※適格合併と非適格合併については、説明が長くなるため別途コラムで書きます

詳細は以下の通りとなります。

当事者 適格合併 非適格合併
合併法人 ・課税関係なし
※資産負債は帳簿価額で引継ぐ
(合併時は課税関係なし)
・法人税:資産調整勘定が発生
※時価で引継ぐ
被合併法人 ・課税関係なし
※資産負債は帳簿価額で移転する
・法人税:譲渡益課税あり
※時価で移転
被合併法人の株主 ・課税関係なし ・所得税:みなし配当課税
・所得税:譲渡益課税

なお、消費税については、権利義務の包括承継であり、不課税とされています(消費税法施行令2条1項4号)。

3.会社分割に係る課税関係

会社分割には、吸収分割と新設分割の2種類があります。
会社法上、会社分割の定義はありませんが、吸収分割と新設分割の定義があります。

吸収分割とは、「株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後他の会社に承継させること」をいいます(会社法2条29号)。
新設分割とは、「1または2以上の株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割により設立する会社に承継させること」をいいます(会社法2条30号)。

以下、吸収分割を前提として記載します。
また、いわゆる逆取得では、分割会社が取得企業になるケースも考えられますが、分割承継法人が取得会社であることを前提に記載します。
※分割型分割と分社型分割がありますが、また別コラムで執筆予定です

合併と同様、法人税法上、適格分割・非適格分割で課税関係が異なり、適格分割では課税の繰り延べが認められている一方、非適格分割では時価で引き継ぐことが要求されています。一方で、被分割法人の株主の取り扱いについては、分割型分割・分社型分割で取り扱いが異なりますが、非適格分割の場合はみなし配当課税がなされる可能性があります。

当事者 適格分割 非適格分割
分割承継法人
※取得企業
・課税関係なし
※資産負債は帳簿価額で引継ぐ
(合併時は課税関係なし)
・法人税:資産調整勘定が発生
※時価で引継ぐ
分割法人
※非取得企業
・課税関係なし
※資産負債は帳簿価額で移転する
・法人税:譲渡益課税あり
※時価で移転
分割法人の株主 ・課税関係なし (分割型分割の場合)
・所得税:みなし配当課税
・所得税:譲渡益課税

では、消費税法上の扱いはどのような扱いになるでしょうか。

結論から記載しますと、合併と同様、権利義務の包括承継であり、消費税は4要件のうちの「④:資産の譲渡、貸付け、及び役務の提供」を満たさず不課税取引となります(消費税法施行令2条1項4号)。

4.株式交換に係る課税関係

株式交換とは、発行済株式の全部を他の会社に取得させることをいい、取得した会社を株式交換完全親会社、取得される会社を株式交換完全子会社といいます(会社法2条31号)。

株式交換についても、適格株式交換と非適格株式交換で課税関係が異なり、適格株式交換では課税の繰り延べが認められている一方、非適格株式交換では時価で引き継ぐことが要求されます。一方で、完全子法人の株主についてのみなし配当課税はありません

当事者 適格株式交換 非適格株式交換
完全親法人 ・課税関係なし ・課税関係なし
完全子法人 ・課税関係なし ・法人税:一定の資産(※)については譲渡益課税あり
完全子法人の株主 ・課税関係なし ・所得税:みなし配当課税なし
・所得税:譲渡益課税

※一定の資産とは、、固定資産、土地等、有価証券、金銭債権及び繰延資産とされてますが、資産の帳簿価額が1,000万円未満など、一定のものは除かれます(法人税法62条の9、法人税法施行令 第123条の11)

なお、消費税については、合併・会社分割と異なり権利義務の包括承継ではないため、有価証券の譲渡として非課税取引に該当します。
非課税売上の5%を課税売上割合の分母に算入しなければならないため、課税売上割合が下がる点、留意が必要です。

5.株式移転に係る課税関係

株式移転とは、1又は2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいいます。(会社法2条32号)

つまり、簡単にいうと株式交換の新設バージョンです。

株式移転についても、適格株式移転と非適格株式移転で課税関係が異なり、適格株式移転では課税の繰り延べが認められている一方、非適格株式移転では時価で引き継ぐことが要求されます。一方で、株式移転完全子法人の株主についてのみなし配当課税はありません

当事者 適格株式移転 非適格株式移転
株式移転設立完全親法人 ・課税関係なし ・課税関係なし
株式移転完全子法人 ・課税関係なし ・法人税:一定の資産(※)については譲渡益課税あり
株式移転完全子法人の株主 ・課税関係なし ・所得税:みなし配当課税なし
・所得税:譲渡益課税

※一定の資産とは、、固定資産、土地等、有価証券、金銭債権及び繰延資産とされてますが、資産の帳簿価額が1,000万円未満など、一定のものは除かれます(法人税法62条の9、法人税法施行令 第123条の11)

なお、消費税については、合併・会社分割と異なり権利義務の包括承継ではないため、有価証券の譲渡として非課税取引に該当します。
非課税売上の5%を課税売上割合の分母に算入しなければならないため、課税売上割合が下がる点、留意が必要です。

(参考)法人税法62条の9
第六十二条の九 内国法人が自己を株式交換等完全子法人又は株式移転完全子法人とする株式交換等又は株式移転(適格株式交換等及び適格株式移転並びに株式交換又は株式移転の直前に当該内国法人と当該株式交換に係る株式交換完全親法人又は当該株式移転に係る他の株式移転完全子法人との間に完全支配関係があつた場合における当該株式交換及び株式移転を除く。以下この項において「非適格株式交換等」という。)を行つた場合には、当該内国法人が当該非適格株式交換等の直前の時において有する時価評価資産(固定資産、土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く。)、有価証券、金銭債権及び繰延資産で政令で定めるもの以外のものをいう。)の評価益(当該非適格株式交換等の直前の時の価額がその時の帳簿価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。)又は評価損(当該非適格株式交換等の直前の時の帳簿価額がその時の価額を超える場合のその超える部分の金額をいう。)は、当該非適格株式交換等の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
2 前項の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

(参考)法人税法施行令 第123条の11(2項以降は長いので省略)
第百二十三条の十一 法第六十二条の九第一項(非適格株式交換等に係る株式交換完全子法人等の有する資産の時価評価損益)に規定する政令で定めるものは、次に掲げる資産とする。
一 法第六十二条の九第一項の内国法人が同項に規定する非適格株式交換等の日の属する事業年度開始の日前五年以内に開始した各事業年度又は各連結事業年度(以下この号及び第五号において「前五年内事業年度等」という。)において次に掲げる規定の適用を受けた減価償却資産(当該減価償却資産が適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配により被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人(以下この号において「被合併法人等」という。)から移転を受けたものである場合には、当該被合併法人等の当該前五年内事業年度等において次に掲げる規定の適用を受けたものを含む。)
イ 法第四十二条第一項、第二項、第五項又は第六項(国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)
ロ 法第四十四条第一項又は第四項(特別勘定を設けた場合の国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)
ハ 法第四十五条第一項、第二項、第五項又は第六項(工事負担金で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)
ニ 法第四十七条第一項、第二項、第五項又は第六項(保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)
ホ 法第四十九条第一項又は第四項(特別勘定を設けた場合の保険金等で取得した固定資産等の圧縮額の損金算入)
ヘ 法第八十一条の三第一項(個別益金額又は個別損金額)(イからホまでに掲げる規定により同項に規定する個別損金額を計算する場合に限る。)
ト 租税特別措置法第六十七条の四第一項若しくは第二項(転廃業助成金等に係る課税の特例)(同条第九項において準用する場合を含む。)又は同条第三項(同条第十項において準用する場合を含む。)
チ 租税特別措置法第六十八条の百二第一項若しくは第二項(転廃業助成金等に係る課税の特例)(同条第十項において準用する場合を含む。)又は同条第三項(同条第十一項において準用する場合を含む。)
二 法第六十一条の三第一項第一号(売買目的有価証券の評価益又は評価損の益金又は損金算入等)に規定する売買目的有価証券
三 第百十九条の十四(償還有価証券の帳簿価額の調整)に規定する償還有価証券
四 資産の帳簿価額(資産を財務省令で定める単位に区分した後のそれぞれの資産の帳簿価額とする。次号及び次項において同じ。)が千万円に満たない場合の当該資産
五 資産の価額(資産を前号に規定する単位に区分した後のそれぞれの資産の価額とする。以下この号及び次項において同じ。)とその帳簿価額との差額(前五年内事業年度等において第一号に掲げる規定の適用を受けた固定資産(同号に規定する減価償却資産を除く。)で、その価額がその帳簿価額を超えるものについては、当該前五年内事業年度等において同号に掲げる規定により損金の額に算入された金額又はその超える部分の金額のいずれか少ない金額を控除した金額)が同号の内国法人の資本金等の額の二分の一に相当する金額又は千万円のいずれか少ない金額に満たない場合の当該資産
六 法第六十二条の九第一項の内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人(次に掲げるものに限る。)の株式又は出資で、その価額がその帳簿価額に満たないもの
イ 清算中のもの
ロ 解散(合併による解散を除く。)をすることが見込まれるもの
ハ 当該他の内国法人との間に完全支配関係がある内国法人との間で適格合併を行うことが見込まれるもの

6.事業譲渡に係る課税関係

事業譲渡とは、会社法に定義はありませんが過去の判例によると、「一定の営業目的のために組織化され有機的一体として機能する財産(=事業)の全部または一部の譲渡」、と定義されます。

事業譲渡については、会社法によって特別に定められた組織再編行為ではなく、取引法上の行為となるため、課税関係も株式取得と似た課税関係となります。

当事者 課税関係
事業譲渡法人 法人税:譲渡益課税
(実効税率(中小法人約36%))
※時価で移転
事業譲受法人 (事業譲受時は課税関係なし)
・法人税:資産調整勘定が発生
※時価で引継ぐ

なお、消費税については、事業譲渡の対象資産の課税区分に従って処理することとなります。
従って、例えば、土地と建物が含まれる場合、土地は非課税、建物は課税対象として処理することとなります。
また、のれん(営業権)が発生する場合、当該のれんも消費税課税対象として処理することとなります。

7.まとめ

・適格に該当するか、非適格かで課税関係は大きく異なる
・非適格合併及び分割型分割はみなし配当が生じる
・株式取得及び事業譲渡は取引法上の行為であり、消費税に留意
・組織法上の行為である、合併・会社分割・株式交換・株式移転は消費税は課税されない

組織再編行為は取引金額が多額となるケースが多く、課税関係を間違えると影響は大きいです。また、消費税の処理についても慎重に検討して適切な処理を行うことが極めて重要となります。

弊社は組織再編行為に関するご相談にも乗っていますので、お気軽にお問い合わせよりご相談ください。

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