こんにちは、公認会計士・税理士の国近です。
今回のテーマは前回に引き続き消費税についてです。
会社分割・事業譲渡では消費税はどのように関係してくるでしょうか。
また、合併等の扱いはどうなるでしょうか。
ニッチですが、組織再編行為に係る消費税について記載したいと思います。
※組織再編行為は複雑なため、本コラムでは簡潔な説明に留めておき、別のコラムにて詳細の解説をする予定です。
1.会社分割に係る消費税
会社分割には、吸収分割と新設分割の2種類があります。
会社法上、会社分割の定義はありませんが、吸収分割と新設分割の定義があります。
吸収分割とは、「株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後他の会社に承継させること」をいいます(会社法2条29号)。
新設分割とは、「1または2以上の株式会社または合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割により設立する会社に承継させること」をいいます(会社法2条30号)
また、法人税法上、適格分割・非適格分割の2種類に分けられます。
では、消費税法上の扱いはどのような扱いになるでしょうか。
結論から記載しますと、会社分割は吸収分割・新設分割・適格分割・非適格分割を問わず、権利義務の包括承継であり、消費税は4要件のうちの「④:資産の譲渡、貸付け、及び役務の提供」を満たさず不課税取引となります(消費税法施行令2条1項4号)。
※消費税法施行令2条(抜粋)
(資産の譲渡等の範囲)
第二条 法第二条第一項第八号に規定する対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 負担付き贈与による資産の譲渡
二 金銭以外の資産の出資(特別の法律に基づく承継に係るものを除く。)
三 法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第二十九号ハ(定義)に規定する特定受益証券発行信託又は同条第二十九号の二に規定する法人課税信託(同号ロに掲げる信託を除く。以下この号において「法人課税信託」という。)の委託者がその有する資産(金銭以外の資産に限る。)の信託をした場合における当該資産の移転及び法第十四条第一項の規定により同項に規定する受益者(同条第二項の規定により同条第一項に規定する受益者とみなされる者を含む。)がその信託財産に属する資産を有するものとみなされる信託が法人課税信託に該当することとなつた場合につき法人税法第四条の七第九号(受託法人等に関するこの法律の適用)の規定により出資があつたものとみなされるもの(金銭以外の資産につき出資があつたものとみなされるものに限る。)
四 貸付金その他の金銭債権の譲受けその他の承継(包括承継を除く。)
五 不特定かつ多数の者によつて直接受信されることを目的とする無線通信の送信で、法律により受信者がその締結を行わなければならないこととされている契約に基づき受信料を徴収して行われるもの
2.事業譲渡に係る消費税
事業譲渡とは、過去の判例によると「一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産の全部又は重要な一部の譲渡」とされています。
事業譲渡は、権利義務の包括承継ではないため、それぞれの譲渡する資産の内容により消費税の課税・非課税の判断を行い、いわゆる営業権(※)として支払った金額も課税の対象となります。
※すなわち、のれん/資産調整勘定の部分
取引によっては、譲渡対象の固定資産・いわゆる営業権が非常に多額となる可能性もあるため、誤って不課税としないことが極めて重要となります。
3.合併に係る消費税
合併とは、2以上の会社が契約により1つの会社になることをいいます。
合併についても、新設合併・吸収合併・適格合併・非適格合併など様々な種類の合併があります。
ただ、消費税については、会社分割と同様、権利義務の包括承継であり、不課税とされています。
4.まとめ
吸収分割・合併は消費税対象外取引として、消費税は課されません。
一方、事業譲渡については、譲渡する資産の内容ごとに課税区分を判断する必要があり、いわゆる営業権については課税対象となります。
また、会社分割・事業譲渡では消費税の処理が異なるため、スキームの選択にも影響を及ぼす可能性があります。
組織再編行為は取引金額が多額となるケースが多く、消費税の処理についても慎重に検討して適切な処理を行うことが極めて重要となります。
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