固定資産に関する税務処理②~賃借不動産に対する投資・内部造作物~

公認会計士の国近です。
今回のテーマは前回に引き続き固定資産に関する税務処理についてです。

今回は、A賃借不動産に投資等(例えば賃借している建物に対して工事等)を行った場合やB建物の内部造作物について、どのように処理すべきかという点にフォーカスしたいと思います。

1.賃借不動産に対して投資を行った場合(他人の建物に対する造作)

賃借不動産に投資等を行った場合、当該投資が賃借不動産自身(すなわち建物)に対して行われる場合、基本的には耐用年数基本通達1-1-3「他人の建物に対する造作の耐用年数」が適用されるものと考えられます。
※ただし、投資が賃借不動産自身に対して行われた投資であるかどうかという点につき検討が必要な点、ご留意ください

耐用年数基本通達1-1-3「他人の建物に対する造作の耐用年数」では以下のように記載されています。

【他人の建物に対する造作の耐用年数(耐用年数基本通達1-1-3抜粋)】
法人が建物を貸借し自己の用に供するため造作した場合(現に使用している用途を他の用途に変えるために造作した場合を含む。)の造作に要した金額は、当該造作が、建物についてされたときは、当該建物の耐用年数、その造作の種類、用途、使用材質等を勘案して、合理的に見積った耐用年数により、建物附属設備についてされたときは、建物附属設備の耐用年数により償却する。ただし、当該建物について賃借期間の定めがあるもの(賃借期間の更新のできないものに限る。)で、かつ、有益費の請求又は買取請求をすることができないものについては、当該賃借期間を耐用年数として償却することができる。
(注) 同一の建物(一の区画ごとに用途を異にしている場合には、同一の用途に属する部分)についてした造作は、その全てを一の資産として償却をするのであるから、その耐用年数は、その造作全部を総合して見積ることに留意する。

 

つまり、耐用年数基本通達1-1-3では、以下の通り規定されていることとなります
①他人の建物に対して、造作を行った場合には、合理的に見積もった耐用年数
②他人の建物附属設備に対して、造作を行った場合には、当該建物附属設備の耐用年数
③ただし、①・②いずれの場合においても賃借期間の定めがあるもの(賃借期間の更新のできないものに限る。)で、かつ、有益費の請求又は買取請求をすることができないものについては、当該賃借期間を耐用年数とする

※①の合理的な耐用年数については、例えば、(1)日よけ設備(金属製)15年、(2)室内装飾(金属製でないもの)8年(3)ホテル用の建物内装工事(木造でない)39年を、同一の建物にした場合、そのすべてを一の資産として償却をするため、(1)~(3)の年償却額を試算し、取得価額合計から年償却額を除することで全体の耐用年数を決定すること等が考えられます。
※③については、例えば定期借地契約を締結している場合に該当するものと思われますが、実際の契約内容に応じて検討することとなります。

また、建物・建物附属設備いずれに分類するかについては、特段の規定がないため、自己保有の不動産に対して造作を起こった場合と同様の検討をしていくものと思われます。

2.建物の内部造作物

また、建物の内部に施設された造作については、耐用年数基本通達1-2-3に別途規定されており、抜粋すると以下の通りとなります。

【建物の内部造作物】
建物の内部に施設された造作については、その造作が建物附属設備に該当する場合を除き、その造作の構造が当該建物の骨格の構造と異なっている場合においても、それを区分しないで当該建物に含めて当該建物の耐用年数を適用する。したがって、例えば、旅館等の鉄筋コンクリート造の建物について、その内部を和風の様式とするため特に木造の内部造作を施設した場合においても、当該内部造作物を建物から分離して、木造建物の耐用年数を適用することはできず、また、工場建物について、温湿度の調整制御、無菌又は無じん空気の汚濁防止、防音、遮光、放射線防御等のために特に内部造作物を施設した場合には、当該内部造作物が機械装置とその効用を一にするとみられるときであっても、当該内部造作物は建物に含めることに留意する。

 

すなわち、鉄筋コンクリートの事務所(耐用年数50年)について、木造の内部造作を行った場合、木造事務所(耐用年数24年)を適用することはできず、鉄筋コンクリートの耐用年数50年を適用することが耐用年数基本通達1-2-3では求められています。

例えば、防音工事を鉄筋コンクリートの事務所(耐用年数50年)に行った場合、当該防音工事の耐用年数は50年となるわけですね。
※耐用年数基本通達1-2-3に当該内部造作物が機械装置とその効用を一にするとみられるときであっても、当該内部造作物は建物に含めることに留意するとあるため。

3.まとめ

今回は賃借不動産に対する投資・内部造作物の耐用年数について記載致しました。
建物・建物附属設備は区分が分かりにくいことや、耐用年数が長期にわたることが多く取得価額が大きいため、誤った処理を行った場合の影響額も大きいものとなります。

建物等に投資を行う場合、いつも以上に丁寧な検討が必要となるため、適宜専門家とご相談のうえ、ご対応頂けますと幸いです

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