こんにちは、公認会計士・税理士の国近です。
新型コロナウィルスが流行り、暗いニュースが多かった2020年、飲食店・ホテル・航空業界は特にキャンセルが多かったかと思います。
では、キャンセル料は消費税法上、課税対象でしょうか。
もしくは非課税ないし不課税とされるのでしょうか。
1.キャンセル料の性質
キャンセル料が課税の対象となるかどうかを論じる前に、そもそもキャンセル料はどのような性質のものでしょうか。
一般にキャンセル料と言われるものについては、①キャンセルにかかる事務手数料としての性格をもつもの、②キャンセルに伴い生じる逸失利益に対する損害賠償金としての性格をもつもの、の2種類に分類できます。
2.キャンセル料と課税対象の4要件
①キャンセルにかかる事務手数料としての性格をもつもの、②キャンセルに伴い生じる逸失利益に対する損害賠償金としての性格をもつもの、それぞれについて課税対象の4要件への当てはめを検討してみましょう。
前提:内国法人が航空運賃30,000円(税抜)で、解約に伴う手数料200円(税抜)、出発日の1週間前から航空運賃50%のキャンセル料(15,000円)がかかる場合
A:国内において
B:事業者が事業として
C:対価を得て行う
D:資産の譲渡、貸付け、及び役務の提供
①キャンセルにかかる事務手数料としての性格をもつもの
ABについては内国法人のため該当します。
また、解約に伴う手数料については、「解約手続などの事務を行う役務の提供(=D)」に対する「対価を得て」(=C)いますのでCDについても該当します。
従って、①(前提条件では、解約に伴う手数料200円部分)については課税対象の4要件に該当し課税取引となります。
②キャンセルに伴い生じる逸失利益に対する損害賠償金としての性格をもつもの
ABについては内国法人のため該当します。
一方で、②の性質は逸失利益に対する損害賠償金としての性格をもつため、Cの対価性はありません。
従って、②(前提条件では、航空運賃50%相当の15、000円部分)については、課税対象の4要件を満たさず、不課税取引となります。
国税庁HPでは以下のように記載されています。
【逸失利益に対する損害賠償金としてのキャンセル料】
本来得ることができたであろう利益がなくなったことの補てん金ですから、資産の譲渡等の対価に該当しないため課税の対象となりません。
例えば、航空運賃のキャンセル料などで、搭乗区間や取消時期などにより金額の異なるものは、逸失利益等に対する損害賠償金に該当するので課税の対象となりません。
No.6253 キャンセル料
3.事務手数料相当部分・損害賠償金相当部分を区分していない場合
では、事務手数料に相当する部分と損害賠償金に相当する部分を区分していない場合の扱いはどのようになるでしょうか。
この点、以下のように、全額を不課税と取扱う旨、国税庁で明記されています。
【全額について事務手数料に相当する部分と損害賠償金に相当する部分を区分することなく一括して受領しているキャンセル料】
ゴルフ場の予約をキャンセルした際に受領するキャンセル料などで、事業者がその全額について事務手数料に相当する部分と損害賠償金に相当する部分を区分することなく一括して受領しているときは、その全額を不課税として取り扱うこととされています。
No.6253 キャンセル料
4.まとめ
①キャンセルにかかる事務手数料としての性格をもつもの
→課税取引
②キャンセルに伴い生じる逸失利益に対する損害賠償金としての性格をもつもの
→不課税取引(対価性がない損害賠償金と同様の取り扱い)
以上、本コラムではキャンセル料の取り扱いについて執筆しましたが、如何でしょうか。
キャンセル料の取り扱いについては、判断に迷うことがあるかと思いますが、課税の4要件から整理していけば分かりやすいのではないでしょうか。
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