こんにちは、公認会計士・税理士の国近です。
今回のテーマもM&Aに関連して、退職金についてです。
M&Aにおいては、オーナー株主である代表取締役の退任の他、使用人(=従業員)であった者が役員に就任するというケースもあります。
使用人が役員となった場合、退職金の損金算入の扱いはどのようになるでしょうか。
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今回は、いわゆる「退職給与の打切支給」についてです。
1.使用人が役員になった場合の退職給与(退職給与の打切支給)
使用人が役員になった場合、退職給与規程に基づき使用人であった期間に係る退職給与については、損金算入が認められています。ただし、未払計上が認められていない点には留意する必要があります。
具体的には、法人税法基本通達9-2-36で定められており、以下の通りとなります。
【法人税法基本通達9-2-36(抜粋。ただし注書につき9-2-35参照)】
9-2-36 使用人がその法人の役員となった場合において、当該法人がその定める退職給与規程に基づき当該役員に対してその役員となった時に使用人であった期間に係る退職給与として計算される金額を支給したときは、その支給した金額は、退職給与としてその支給をした日の属する事業年度の損金の額に算入する。(注) この場合の打切支給には、法人が退職給与を打切支給したこととしてこれを未払金等に計上した場合は含まれない。
なお、法人税法基本通達9-2-36及び法人税法基本通達9-2-35の注書きによると、未払金計上した場合は認めておらず、現実に金銭の支給が行われることが要件とされています。
※法人税法基本通達9-2-36では、退職の事実が無いものについて、例外的に認めているものであるため
2.退職給与の打切支給が認められず、損金不算入となる場合
また、以下の場合は、法人税法基本通達9-2-36の取り扱いが認められず、役員賞与として損金不算入になるものと考えられます。
(1)役員に就任した後、相当期間経過後に支給される場合
使用人としての地位がなくなったことにより、役員に就任したときに使用人としての退職給与を支給する場合に認めるものであるためです。
(2)退職給与規程から、使用人であった期間に係る退職給与として計算される金額として相当でない場合
あくまで、使用人であった期間に係る退職給与として計算される金額として相当である必要があります。
※この場合、法人税基本通達9-2-27の規定「使用人が役員となった直後に支給される賞与等」に該当しなければ、役員賞与として損金不算入となります
(3)現実に金銭の支給が行われず未払金計上した場合
前述した通り、法人税法基本通達9-2-36及び法人税法基本通達9-2-35の注書きによると、未払金計上した場合は認めておらず、現実に金銭の支給が行われることが要件とされています。
【法人税法基本通達9-2-27】
9-2-27 使用人であった者が役員となった場合又は使用人兼務役員であった者が令第71条第1項各号《使用人兼務役員とされない役員》に掲げる役員となった場合において、その直後にその者に対して支給した賞与の額のうちその使用人又は使用人兼務役員であった期間に係る賞与の額として相当であると認められる部分の金額は、使用人又は使用人兼務役員に対して支給した賞与の額として認める。
3.まとめ
退職給与の打切支給は一定の要件を満たせば、損金算入が可能となっています。
ただし、未払金計上は認められていない点に留意する必要があります。
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